阿部哲茂法律事務所 トピックス

法律の話題を載せております。

2024.08.28

【大神 亮輔】

コラム

司法修習生

縁あって、司法修習生(司法試験を合格した後、法曹になるための研修生のような立場の人です。)の指導担当をさせていただいています。
現在は無意識にしていることを「こういう意図があるんだ」と言葉で説明することで、こちらも改めて初心に帰れるので、指導する側のためにもなっています。
これまでのような机の上での勉強だけでなく、できるだけ多くの生の事件に触れてもらい、私が司法修習生だった時に指導担当をしてくれた弁護士を見て感じたように、司法修習生に「弁護士はやりがいがある仕事だ」と思ってもらいたいなと願いながら指導をしています。

2024.08.09

【伊塚允耶】

コラム

相続登記の義務化について


本年(令和6年)4月1日より、相続登記の義務化がスタートしております。
背景事情としては、所有者が判明しない土地や所有者の所在が不明で連絡が付かない土地が年々増えており、これにより民間取引、公共事業、災害復興の妨げとなっていたからです。

そのため、相続で不動産の所有権を取得した場合には、相続の開始を知って、かつ、所有権を取得したと知った日から3年以内に所有権移転の登記を申請しなければならなくなりました。
(遺産分割で異なる割合で所有権を取得した際は、その分割の日から3年以内の登記申請が義務付けられます。)

これらの申請を怠ると罰則があり、10万円以下の過料が科せられる場合があります。

今回の相続登記義務化については、相続の発生が令和6年4月1日より前であっても適用されますので、ご注意ください。

相続に関する手続きには、複雑で面倒な手続きが多くあります。
相続についてご不安な事柄がある場合には、弊所にご相談ください。

2024.02.10

【渡邊敬紘】

コラム

労働契約に関するルールの変更について

労働者を雇い入れる場合には、労働契約を締結した上で、書面で労働条件を明示することになっていますが、この労働条件の明示に関するルールが2024年4月から変わることになっています。

特に、有期雇用契約では、無期転換ルールとの関係で、更新の回数(更新は3回まで)や上限年数(契約は3年まで)などと明示して契約することがありますが、必ずしも労働契約や労働条件通知書に記載されていないことがありました。

2024年4月1日以降においては、こうした更新の上限や回数をあらかじめ労働者に説明して、それを書面で明示しておくことが必要となります(労働者が希望すればメールなどで明示することもできます)。

更新上限の明示については、既に雇用されている有期労働者との関係の整理など複雑ですので、お困りのことがありましたら、弊所までご相談ください。

2023.12.25

【渡邊敬紘】

コラム

良い士業とは

 最近、野村高文さん(Podcast Studio Chronicle代表)の配信されているポッドキャスト番組「経営中毒 〜だれにも言えない社長の孤独〜」を聞くのが日課になっています。
 これは、経営コンサルタントの徳谷智史さん(Egg FORWARD(エッグフォワード)代表)をMCに迎えて、会社の経営者の方々が、普段は人に言えない悩みを赤裸々に語りながら、どのように経営課題に取り組んでいるのかをトークすることをコンセプトにしたポッドキャスト番組です。

 先日(12月23日)、「『士業』の見極め方。税理士・弁護士、良い人は何が違う?」というテーマで配信され、本業にかかわるトピックであったため、早速拝聴しました。

 そうしたところ、おおむね
1 法改正を常にフォローアップしていること
2 法改正を踏まえて、新しいスキームなどを提案できること
3 会社の事業に伴走できる交渉力があること
4 レスポンスが早いこと
の4点が揃っていればいい士業だ、というお話でした。
 裏返せば、真逆の弁護士(法改正に疎い、提案営業できない、会社の事業に伴走できない、レスポンスが遅い弁護士)は経営者からは敬遠されるということでした。

 このPodcast番組でも「弁護士もピンキリだ」という指摘があったように、司法制度改革によって法曹人口が激増し、毎年約1000人近くが弁護士登録している現状では、バッジを付けてからの自己研鑽によって、どれだけ付加価値を付けられるかが大きく問われる時代になってきています。
 また、今年は、AI元年ともいえる年となり、生成AIに関する報道に多く接するようになりました。その中には、ChatGPTなどの生成AIによって将来的な弁護士業務は代替されるのではないかという指摘もありました。

 しかし、弁護士として、リーガルマインドに基づいた助言をすること、また、依頼者の方のお気持ちにも配慮しながら望ましい解決を提案することは、まだまだ人間にしかできない仕事であると考えます。

 今後とも、皆様に「良い士業だ」と評価していただけるように、今後とも良質なリーガルサービスを提供して参りたいと思います。

2023.08.30

【渡邊敬紘】

コラム

有期労働者の無期転換権について

 パートやアルバイトなどの有期雇用の労働者については、労働契約で定めた契約期間が終了すれば、使用者との労働契約も終了します。その後に、使用者が引き続いてその社員を雇用するかは本来であれば自由であるはずです。

 しかしながら、労働契約法はこの点の例外を設けています。一つは、雇止め法理に関する労働契約法19条です。もう一つは、労働契約法18条です。この規定は、同じ使用者と契約期間が通算5年を超える労働契約を締結した有期雇用の労働者に、期間の定めのない雇用契約を結ぶ権利(無期転換権といいます。)を認めるものです。労働者がこの権利を行使した場合、期間の定めのない労働契約が成立することになります。

 大学教員については、「大学の教員等の任期に関する法律」(大学教員任期法)という法律で、無期転換権の通算期間が5年から10年に延長されています。これは、大学側には研究開発のために多様な人材を確保する必要があるところ、通算5年で無期転換を認めると、こうした多様な人材を確保するという目的が達せられないことに配慮したものです。

 この大学教員任期法の規定については、専ら学生の教育に携わる非常勤講師にも適用されるのかという争点が様々な裁判で争われています。今年1月にも大阪高等裁判所で、この問題点について判断した判決が下され、現在上告中です。

 使用者側として、大学教員任期法の規定が非常勤講師にも適用されるかどうかによって、非常勤講師の労務管理の在り方にも大きな影響が生じますので、同裁判の行方を引き続き注視していきたいと思います。

2023.06.27

【渡邊敬紘】

コラム

法人の倒産について

会社の倒産というと、多くの方にとってはマイナスのイメージを持たれている方が多いと思います。会社の資金繰りが上手くいかなくなり、事業を停止して借金の返済をストップし、従業員は全員リストラするというイメージではないでしょうか。

確かに、会社が破産した場合には、そうした事態が起こることは否定できません。しかし、会社の「倒産」には、破産以外にも「民事再生」という手続や、法的手続によらない債務整理などの手続もあります。これらの手続では、場合によってはスポンサーの助けも借りながら、借金の支払をストップしつつ、不採算部門を閉じ、採算部門の立て直しを行うことがあります。弁護士が会社の代理人となってこのような手続を申し立てる例もあります。

会社を破産して清算する以外にも、会社を再建するための手続もありますので、頭の片隅に置いておいて頂ければ幸いです。

2023.06.02

【渡邊敬紘】

コラム

建物賃貸借契約について

建物を他人に貸す場合、建物を貸して賃料を支払ってもらう契約(建物賃貸借契約、借家契約ともいいます。)を結ぶことが一般的ですが、この「建物賃貸借契約」には注意が必要です。

というのも、この建物賃貸借契約が結ばれると、賃借人は「借地借家法」という法律で強力に保護され、賃借人に建物の返還を求めるには、「正当の事由」が必要とされます。そのため、賃借人から立退きの際に多額の立退料を要求され、賃貸人とトラブルになるという例が後を絶ちません。

このようなトラブルを避ける方法として「定期建物賃貸借」を結ぶという方法があります。当事者で合意した期間が過ぎれば賃貸借契約が終了することを説明したうえで、賃貸借契約書を作成すれば、期間が満了すれば立退きを求められる、という契約です。

賃貸人にとっては便利な契約ですが、契約締結を行う際に、賃貸人・賃借人双方に注意すべき点もあります。弊所では、不動産関係のご相談も承っておりますので、不動産についてお困りのことがありましたら、弊所までご相談ください。

2023.05.06

【大神亮輔】

コラム

民法改正

法令の条文は日々変化していきますが、今年の4月1施行された条項も色々とあります。

例えば、これまでは隣地の木が成長して越境してきた場合、根は自ら切ることができたのですが、枝葉については隣地所有者に切るよう求めなければならず、対応してくれない場合でも自分で切ることはできませんでした。
もっとも、改正法では、隣地所有者が不明なときや、隣地所有者に切るよう求めても対応してくれない場合には、枝葉についても切ることができるようになっています(民法233条3項)。

このほか、法定相続人が不在の時に相続財産に関する処理を行う人物について、従前は「相続財産管理人」とされていたのですが、今回の改正で相続財産を管理する「相続財産管理人」と相続財産に関する処理を行う「相続財産清算人」とに区分されるなどしています。

当然のことではありますが、我々弁護士は日々知識や運用のアップデートを図っていかなければなりません。適切なリーガルサービス提供のために精進を続けています。

2023.04.26

【渡邊敬紘】

コラム

共同親権の導入について

先日、法務省の法制審議会において、離婚後の共同親権を導入することを検討していると報道がありました。

現在の民法では、両親が離婚をする場合には、子どもの親権者は父か母のどちらか一方とする単独親権の制度が採用されています。そのため、離婚の協議を行う際に、どちらが子どもの親権者になるかを巡って争いになることがあります。共同親権の制度が採用されれば、このような親権を巡る争いを回避できるようになるかもしれません。また、父親が共同親権者になれば、養育費を責任を持って支払うようになる、と考える方もいるようです。もっとも、個人的には、養育費の不払いの問題は、履行確保制度の充実や公的な保証制度の整備によって解決すべき問題だと考えています。

共同親権の制度の導入によって、家裁における離婚調停の実務にも影響が見込まれますので、今後の議論を注視していきたいと思います。

2023.02.02

【阿部哲茂】

コラム

改正民法の施行

令和3年4月に改正された民法が、令和5年4月から施行されます。今回の改正は、以前大幅に改正された債権関係の改正ではなく、相隣、共有、所有者不明土地管理命令等の個人が主体となる部分の大幅な改正のようです。
法学部生のころ、法律クイズといった類で、「隣地の柿の木の枝が越境していても、その枝になっている柿の実を勝手に取ってはならない。しかし、隣地の竹の根が越境して自分の土地に筍が生えた場合は取ってよい。」というものがありましたが、このような相隣関係についても改正がされているようです。
もちろん、企業法務とは直接関係のない改正が大部分だと思いますが、「民法」という基本六法の重鎮の改正ですから、最低限はフォローしておくことが大切です。
 当事務所の企業法務研究会では、年に1回程度、こうした企業法務とは関係のない相続法や相隣関係等の勉強会も行っておりますので、ご興味がありましたら、是非、ご参加ください。
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