阿部哲茂法律事務所 トピックス

法律の話題を載せております。

2024.02.10

【渡邊敬紘】

コラム

労働契約に関するルールの変更について

労働者を雇い入れる場合には、労働契約を締結した上で、書面で労働条件を明示することになっていますが、この労働条件の明示に関するルールが2024年4月から変わることになっています。

特に、有期雇用契約では、無期転換ルールとの関係で、更新の回数(更新は3回まで)や上限年数(契約は3年まで)などと明示して契約することがありますが、必ずしも労働契約や労働条件通知書に記載されていないことがありました。

2024年4月1日以降においては、こうした更新の上限や回数をあらかじめ労働者に説明して、それを書面で明示しておくことが必要となります(労働者が希望すればメールなどで明示することもできます)。

更新上限の明示については、既に雇用されている有期労働者との関係の整理など複雑ですので、お困りのことがありましたら、弊所までご相談ください。

2023.12.25

【渡邊敬紘】

コラム

良い士業とは

 最近、野村高文さん(Podcast Studio Chronicle代表)の配信されているポッドキャスト番組「経営中毒 〜だれにも言えない社長の孤独〜」を聞くのが日課になっています。
 これは、経営コンサルタントの徳谷智史さん(Egg FORWARD(エッグフォワード)代表)をMCに迎えて、会社の経営者の方々が、普段は人に言えない悩みを赤裸々に語りながら、どのように経営課題に取り組んでいるのかをトークすることをコンセプトにしたポッドキャスト番組です。

 先日(12月23日)、「『士業』の見極め方。税理士・弁護士、良い人は何が違う?」というテーマで配信され、本業にかかわるトピックであったため、早速拝聴しました。

 そうしたところ、おおむね
1 法改正を常にフォローアップしていること
2 法改正を踏まえて、新しいスキームなどを提案できること
3 会社の事業に伴走できる交渉力があること
4 レスポンスが早いこと
の4点が揃っていればいい士業だ、というお話でした。
 裏返せば、真逆の弁護士(法改正に疎い、提案営業できない、会社の事業に伴走できない、レスポンスが遅い弁護士)は経営者からは敬遠されるということでした。

 このPodcast番組でも「弁護士もピンキリだ」という指摘があったように、司法制度改革によって法曹人口が激増し、毎年約1000人近くが弁護士登録している現状では、バッジを付けてからの自己研鑽によって、どれだけ付加価値を付けられるかが大きく問われる時代になってきています。
 また、今年は、AI元年ともいえる年となり、生成AIに関する報道に多く接するようになりました。その中には、ChatGPTなどの生成AIによって将来的な弁護士業務は代替されるのではないかという指摘もありました。

 しかし、弁護士として、リーガルマインドに基づいた助言をすること、また、依頼者の方のお気持ちにも配慮しながら望ましい解決を提案することは、まだまだ人間にしかできない仕事であると考えます。

 今後とも、皆様に「良い士業だ」と評価していただけるように、今後とも良質なリーガルサービスを提供して参りたいと思います。

2023.08.30

【渡邊敬紘】

コラム

有期労働者の無期転換権について

 パートやアルバイトなどの有期雇用の労働者については、労働契約で定めた契約期間が終了すれば、使用者との労働契約も終了します。その後に、使用者が引き続いてその社員を雇用するかは本来であれば自由であるはずです。

 しかしながら、労働契約法はこの点の例外を設けています。一つは、雇止め法理に関する労働契約法19条です。もう一つは、労働契約法18条です。この規定は、同じ使用者と契約期間が通算5年を超える労働契約を締結した有期雇用の労働者に、期間の定めのない雇用契約を結ぶ権利(無期転換権といいます。)を認めるものです。労働者がこの権利を行使した場合、期間の定めのない労働契約が成立することになります。

 大学教員については、「大学の教員等の任期に関する法律」(大学教員任期法)という法律で、無期転換権の通算期間が5年から10年に延長されています。これは、大学側には研究開発のために多様な人材を確保する必要があるところ、通算5年で無期転換を認めると、こうした多様な人材を確保するという目的が達せられないことに配慮したものです。

 この大学教員任期法の規定については、専ら学生の教育に携わる非常勤講師にも適用されるのかという争点が様々な裁判で争われています。今年1月にも大阪高等裁判所で、この問題点について判断した判決が下され、現在上告中です。

 使用者側として、大学教員任期法の規定が非常勤講師にも適用されるかどうかによって、非常勤講師の労務管理の在り方にも大きな影響が生じますので、同裁判の行方を引き続き注視していきたいと思います。

2023.06.27

【渡邊敬紘】

コラム

法人の倒産について

会社の倒産というと、多くの方にとってはマイナスのイメージを持たれている方が多いと思います。会社の資金繰りが上手くいかなくなり、事業を停止して借金の返済をストップし、従業員は全員リストラするというイメージではないでしょうか。

確かに、会社が破産した場合には、そうした事態が起こることは否定できません。しかし、会社の「倒産」には、破産以外にも「民事再生」という手続や、法的手続によらない債務整理などの手続もあります。これらの手続では、場合によってはスポンサーの助けも借りながら、借金の支払をストップしつつ、不採算部門を閉じ、採算部門の立て直しを行うことがあります。弁護士が会社の代理人となってこのような手続を申し立てる例もあります。

会社を破産して清算する以外にも、会社を再建するための手続もありますので、頭の片隅に置いておいて頂ければ幸いです。

2023.06.02

【渡邊敬紘】

コラム

建物賃貸借契約について

建物を他人に貸す場合、建物を貸して賃料を支払ってもらう契約(建物賃貸借契約、借家契約ともいいます。)を結ぶことが一般的ですが、この「建物賃貸借契約」には注意が必要です。

というのも、この建物賃貸借契約が結ばれると、賃借人は「借地借家法」という法律で強力に保護され、賃借人に建物の返還を求めるには、「正当の事由」が必要とされます。そのため、賃借人から立退きの際に多額の立退料を要求され、賃貸人とトラブルになるという例が後を絶ちません。

このようなトラブルを避ける方法として「定期建物賃貸借」を結ぶという方法があります。当事者で合意した期間が過ぎれば賃貸借契約が終了することを説明したうえで、賃貸借契約書を作成すれば、期間が満了すれば立退きを求められる、という契約です。

賃貸人にとっては便利な契約ですが、契約締結を行う際に、賃貸人・賃借人双方に注意すべき点もあります。弊所では、不動産関係のご相談も承っておりますので、不動産についてお困りのことがありましたら、弊所までご相談ください。

2023.05.06

【大神亮輔】

コラム

民法改正

法令の条文は日々変化していきますが、今年の4月1施行された条項も色々とあります。

例えば、これまでは隣地の木が成長して越境してきた場合、根は自ら切ることができたのですが、枝葉については隣地所有者に切るよう求めなければならず、対応してくれない場合でも自分で切ることはできませんでした。
もっとも、改正法では、隣地所有者が不明なときや、隣地所有者に切るよう求めても対応してくれない場合には、枝葉についても切ることができるようになっています(民法233条3項)。

このほか、法定相続人が不在の時に相続財産に関する処理を行う人物について、従前は「相続財産管理人」とされていたのですが、今回の改正で相続財産を管理する「相続財産管理人」と相続財産に関する処理を行う「相続財産清算人」とに区分されるなどしています。

当然のことではありますが、我々弁護士は日々知識や運用のアップデートを図っていかなければなりません。適切なリーガルサービス提供のために精進を続けています。

2023.04.26

【渡邊敬紘】

コラム

共同親権の導入について

先日、法務省の法制審議会において、離婚後の共同親権を導入することを検討していると報道がありました。

現在の民法では、両親が離婚をする場合には、子どもの親権者は父か母のどちらか一方とする単独親権の制度が採用されています。そのため、離婚の協議を行う際に、どちらが子どもの親権者になるかを巡って争いになることがあります。共同親権の制度が採用されれば、このような親権を巡る争いを回避できるようになるかもしれません。また、父親が共同親権者になれば、養育費を責任を持って支払うようになる、と考える方もいるようです。もっとも、個人的には、養育費の不払いの問題は、履行確保制度の充実や公的な保証制度の整備によって解決すべき問題だと考えています。

共同親権の制度の導入によって、家裁における離婚調停の実務にも影響が見込まれますので、今後の議論を注視していきたいと思います。

2023.02.02

【阿部哲茂】

コラム

改正民法の施行

令和3年4月に改正された民法が、令和5年4月から施行されます。今回の改正は、以前大幅に改正された債権関係の改正ではなく、相隣、共有、所有者不明土地管理命令等の個人が主体となる部分の大幅な改正のようです。
法学部生のころ、法律クイズといった類で、「隣地の柿の木の枝が越境していても、その枝になっている柿の実を勝手に取ってはならない。しかし、隣地の竹の根が越境して自分の土地に筍が生えた場合は取ってよい。」というものがありましたが、このような相隣関係についても改正がされているようです。
もちろん、企業法務とは直接関係のない改正が大部分だと思いますが、「民法」という基本六法の重鎮の改正ですから、最低限はフォローしておくことが大切です。
 当事務所の企業法務研究会では、年に1回程度、こうした企業法務とは関係のない相続法や相隣関係等の勉強会も行っておりますので、ご興味がありましたら、是非、ご参加ください。

2022.11.30

【渡邊敬紘】

コラム

住所等の秘匿について

 民事訴訟を提起する場合には、被告に対する請求の内容(請求の趣旨)や、そのような請求を基礎づける事実(請求の原因)を記載した訴状を作成して、裁判所に提出することになります。これに加えて、訴状を提出する際には、原告の郵便番号と電話番号を記載する必要があります(民事訴訟法133条2項2号、民事訴訟規則53条4項)。
 ところが、DV案件やわいせつ犯罪などの被害に遭われた方は、加害者に対し自分の現住所を知られたくないと考えるのが一般的と思われます。加害者に住所を知られてしまうと、加害者に付きまとわれたり、現住所まで押しかけてくるのではないかと懸念するのはごく自然のことといえます。そのため、被害者から加害者に対して損害賠償を請求する場合には、住所を記載せずに訴状を提出することを認めるという運用が認められてきました。もっとも、こうした裁判所の運用は民事訴訟法の法律上の規定に基づくものではありませんでした。
 令和4年5月18日、民事訴訟法の一部を改正する法律が成立しましたが、その改正内容の一つとして「被害者の氏名等を相手方に秘匿する制度」が新設されました(改正民事訴訟法133条)。この制度は、訴えの提起などの申立てをする者の住所が知られることで社会生活を営むのに著しい支障を生ずる恐れがある場合には、氏名等の情報を秘匿することができるという制度になります。この秘匿決定がされた場合には、訴訟記録に綴じられた記録であっても、氏名等の情報については閲覧できないことになります。
 このように、民事訴訟法の改正によって、これまでの住所を秘匿する運用に法律上の根拠が与えられることになりました。改正法は未施行ですが、今後どのように運用されていくのか注視していきたいと思います。

2022.10.27

【渡邊敬紘】

コラム

相続に関する民法改正について

 親族が亡くなった場合、遺産の分割についての調停を家庭裁判所に申し立てることがあります。この遺産分割の調停では、被相続人の看病を熱心に行ったり、家業を手伝って財産の維持に努めたことを寄与分として主張したり、被相続人から生前に贈与を受けたこと(特別受益)を主張して、それを踏まえた遺産分割を求めることが多くあります。
 これまで、こうした遺産分割の調停を申し立てる期限に制限はありませんでした。

 ところが、民法が改正されたことにより、令和5年(2023年)4月1日より、寄与分や特別受益を踏まえた遺産分割を希望する場合、被相続人が死亡してから10年以内に遺産分割を申し立てなければならない、とされました。
 この民法改正には5年の猶予期間が設けられていますが、被相続人の方が亡くなられてから、既に10年が経過している方の遺産分割については民法改正の影響を受けるので注意が必要です。

弊所では、こうした相続に関する業務も取り扱っていますので、ご不明な点がございましたら、弊所までお気軽にご相談ください。
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